stage-1stでは、
「慢性痛ってどうやって評価したらいいの?」
という疑問から、
慢性痛に対する評価スケールとして
CSI(中枢性感作症候群:CSS の評価)
PCS(破局的思考の評価)
を解説しました。
今回は前回からの続きで
TSK(運動恐怖の評価)
HADS(抑うつ、不安の評価)
の2つを解説します。
心理的な問題だから…と片付けずに、
きっちりと評価の上、リハビリで関われる部分は関わりましょう。
慢性痛以外の鑑別は大前提
前回も書きましたが、大事なので。
今回も慢性痛の評価について解説しますが、
その前に侵害受容性疼痛や神経障害性疼痛の可能性を除外することが大前提です。
痛みが3ヶ月以上持続しているから慢性痛だ!と決めつけるのではなく、
筋骨格系や神経系の問題がある方
るいは心理的問題にそれらが混在しているケースも当然います。
最低でも以下に挙げた項目は評価した上で、慢性痛の評価を進めましょう。
・医師の診察
・画像所見
・神経的所見
・Pain DETECT(神経障害性疼痛の評価スケール、今回は割愛)
・整形外科テスト
・ROM
・MMT
・腱反射
慢性痛に対する評価スケール
ここでは以下の評価スケールについて解説します。
・CSI(中枢性感作症候群:CSS の評価)
・PCS(破局的思考の評価)
・TSK(運動恐怖の評価)
・HADS(抑うつ、不安の評価)
冒頭で述べた通り、今回はTSKとHADSについてです。
TSK(Tampa Scale of Kinesiophobia)
TSKは運動恐怖を評価する尺度です。
運動恐怖とは、簡単に言うと患肢を動かすことに対する恐怖心のことです。
17項目の質問で構成されており、カットオフ値は37点です。
なので、37点以上なら運動に対する恐怖が強いということが言えます。
痛みを構成する要素の中に心理社会的要因があり、
心理社会的要因は情動的側面、認知的側面、社会的側面の3つに分けられます。
TSKはその中でも、情動的側面を評価する物です。
慢性疼痛患者では、
認知的制御に関する前頭前野の活動の変容が言われていますが、
情動的制御に関する扁桃体や前帯状回の活動変容も言われています。
また、TSKの点数が高いほど、扁桃体-中脳中心灰白質の連結が弱いことが報告されており、運動恐怖が下行性疼痛抑制系を働きにくくすると考えられています(参考文献①)。
中脳中心灰白質は、不安や恐れなどの情動面と深く関わりがあり
下行性疼痛抑制系を働かせる役割があります。
つまり、扁桃体との連結が弱くなることで、情動的影響(特に運動恐怖)によって痛みが抑制されず、本来以上に痛みを感じてしまう、あるいはそれによる不活動などの二次的な問題も引き起こしてしまいます。
なので、急性期リハを担当するセラピストであっても、慢性痛にならないように、運動恐怖の評価スケールであるTSKは知っておいた方が良いですね。
HADS(Hospital Anxiety and Depression Scale)
HADSは不安に関する尺度と抑うつに関する尺度から構成されます。
14項目の質問で構成されており、カットオフ値は11点です。
抑うつ状態、あるいは慢性疼痛の状態では
中枢神経系のイオンチャネルの持続的な解放が起こります。
それが続くと、ニューロンは慢性的な過活動状態となり
本来なら痛みを感じない程度の刺激であっても痛みを感じやすくなってしまいます。
また、抑うつによって不活動に繋がり
患肢の不使用や身体活動量の低下が起こりやすくなります。
患肢の不使用は術後の固定でも起こり得ますが
疼痛閾値が低下することが言われています。
身体活動量の低下も疼痛と深く関係しています。
下記は有名なfear avoidance modelですが
抑うつや不活動は痛み閾値を下げるので、痛み体験をしやすい。
それが痛みの破局的思考を起こし、回避行動、そしてまた不活動に陥る負のループを作りやすくなってしまいます。
これを避けるためにも、不安の原因はなんなのか、
何故抑うつになってしまったのかを考察し
認知行動療法で認知の歪みを修正していくことが大切です。
CSI、PCS、TSK、HADS、聞きなれない評価スケールだったかもしれませんが、抽象的な問題点を具体的な問題点に分解し、それをどう介入するか?をしっかりと計画してリハビリに取り組みましょう!
参考文献
1.Karin B Jensen et al : Cognitive Behavioral Therapy increases pain-evoked activation of the prefrontal cortex in patients with fibromyalgia. Pain. 2012;153(7):1495-1503.
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