以前のコラムで感覚障害に対する訓練についてcareyの提唱する原則について書きました。
これは感覚自体に対するアプローチとしては参考になるかと思います。
一方、感覚障害だけでなく感覚の統合が上手くなされずに問題が生じるケースもあります。
これは6月の運動機能セミナーでも少し触れましたが、視覚、前庭感覚、体性感覚などの情報が頭頂葉などで統合されることによって、身体図式や身体イメージの構築に繋がると考えられています。身体図式の情報をもとに運動が開始されるため、感覚が正常であることも大事ですし、感覚が統合されるという事も非常に大事だということが言えます。
例を挙げると、失行症の病態の一つとして考えられているのが異種感覚統合の障害です。
異種感覚とは、例えば視覚と運動、視覚と体性感覚など、異なる感覚を上手く統合出来ないという意味です。
例えば、視覚的に確認されないようにした状態でセラピストが患者さんの足部の底屈、背屈を他動的に行います。
患者さんには何種類かの足部の底屈、背屈角度の写真を見せ、(今セラピストによって他動的に動かされている)自分の足の角度の写真を選んでもらいます。
これは、セラピストによって動かされている体性感覚情報と写真を見て選ぶ視覚情報を統合させているという事になります。
失行症ではこの様な異種感覚の統合が脳内でうまくいかないことが病態の一つではないかと考えられています。
このような課題は評価であり、かつ治療にも繋げられるものになります。
臨床的には感覚入力を考えやすいですが、複数の感覚の組み合わせや統合させるという視点も持つと、より良いアプローチに繋がるかもしれません
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