今回は、パーキンソン病について要点を絞りつつ、疾患概要~診断の流れについて簡単に解説していきたいと思います。
①パーキンソン病とは
パーキンソン病と聞くと、「黒質が変性しドパミンの働きが障害される疾患」という認識を持つ人が多いのではないかと思います。
これは間違いではありませんが、実際には黒質以外の神経細胞も変性する多系統変性疾患かつ全身疾患であると言えます。
では、黒質以外では具体的にどのような神経細胞が障害されるのでしょうか。
例えば、交感神経節や脳幹の青斑核、縫線核、マイネルト基底核などが挙げられます。交感神経節は自律神経に関与しているため、障害されると起立性低血圧や神経因性膀胱(頻尿)などが生じます。
青斑核や縫線核は恐怖、不安、情動などに関与しているため、ここが障害されると、鬱・睡眠障害・RBD(レム睡眠行動異常症)などが生じると考えられています。
マイネルト基底核は認知機能に関与していますので、障害されるとMCIなどが生じる可能性があります。
すなわち、パーキンソン病の非運動症状といわれる症状がこれらの障害により顕在化してくる可能性があります。
②パーキンソン病とパーキンソニズム
続いて、パーキンソンニズムについて確認していきましょう。
難病情報センターのHPを見てみると、パーキンソニズムの定義は下記の通りとされています。
パーキンソニズムはパーキンソン病以外の他疾患でも生じる可能性があります。
パーキンソン病と診断されるには、まずパーキンソニズムが存在すること、続いて他の疾患(パーキンソニズムを引き起こしている可能性のある)がないこと、抗パーキンソン病薬を投与し症状改善が得られることが条件とされています。
上に示したのは、難病情報センターのHPに記載されているものでしたが、続いて下のスライドを見てみてください。
これは、MDS(国際運動障害疾患学会)が2015年に提唱したパーキンソン病の診断基準です。世界的には、こちらがスタンダードになってきています。
こちらの診断基準においても、まず「パーキンソニズムがある」ことが診断の前提となっています。
興味深いのは、先ほど示したパーキンソニズムの定義とMDSの示したパーキンソニズムでは定義が異なります。
MDSによる診断基準では、動作緩慢が存在したうえで、安静時振戦と筋強剛のどちらか一つを認めることをパーキンソニズムの定義としています。つまり、姿勢反射障害の有無はパーキンソニズムに含まれないということになります。
これは、姿勢反射障害はパーキンソン病が進行した中期程度から出現することが多いという背景から、診断時点では含めなくても良いという考えのようです。
また、MDSによる診断基準では、確実なパーキンソン病と診断されるために少なくとも二つの支持的基準を満たす必要があります。
支持的基準に関しては上のスライドを参考にしてください。
個人的な感覚としては、赤枠で囲っているMIBG心筋シンチグラフィの検査を行うケースが多い印象を受けています。
診断は医師が行うものですが、どのように診断に至るかを知っておくことはセラピストとしては必要かと思いますので、共有させていただきました。
次回は、症状・評価・治療について解説していく記事を挙げたいと思います。
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