先日サロン会員の方から質問がありましたので、それについて書いていきます。
【質問の要点】
・片麻痺の方で、非麻痺側へ起き上がりをする際、麻痺側管理の悪さなどもあり、麻痺側上
肢が後方へひかれてしまう。
・on elbow、on handを経由できずに勢いで腹筋を使い努力的に起き上がろうとする。
・解決するにはどのようなアプローチが良いか。
質問の要点をまとめるとこの様になります。
この様な症例は急性期、回復期で多く出会いますよね。
まずは起き上がりについておさらいしておきましょう。
起き上がり動作は4相に分けられます。
●1相
・背臥位姿勢から、頭頚部の屈曲・回旋が生じる
・上側の(非麻痺側に寝返る場合麻痺側の)肩甲骨前方突出と上肢リーチが生じる
●2相
・上部体幹の回旋が生じる
・上側(麻痺側)の肩が下側(非麻痺側)の肩の上に位置される
●3相
・上側の肩が下側の肩を超えるタイミングでon elbowが生じる
●4相
on elbowからon handへ移行し床面を押し付けて起き上がる
脳卒中の場合は、まず寝返りの1相の時点から失敗する事が多いです。
理由としては、
・背臥位の時点で安定を求めて床面を押し付けるようなパターン戦略を取りやすい(=頭頚
部の屈曲・回旋を生じにくくさせている)
・上側(麻痺側)のリーチと肩甲骨前方突出が不十分
・非麻痺側の上肢に力が入りすぎて、非麻痺側の肩の上に麻痺側の肩を移動させることがで
きない(=回転運動を生み出しにくくさせる)
・起き上がりの4相までの過程で筋緊張が高まり連合反応が生じ、麻痺側上肢の屈曲・引き
込みパターンが生じてしまう
など様々挙げられます。
なので、どの部分で失敗してしまっているかを評価する必要があります。
特に今回の質問に挙がった症例の様に、非麻痺側へ起き上がりをする際、上側の麻痺側上肢が後方へひかれてしまうようなケースの場合、3相で上側の肩が下側の肩を超える手前で、性急にon elbowを取ろうとすることで、上手くon elbowが取れず、逆に麻痺側上肢が後方へ引かれてしまうような事態に陥ります。
そのため、下側の非麻痺側上肢で安定を作りながら上側の麻痺側上肢を前方突出させていくという関係性を構築していくことが必要になります。
非麻痺側上肢でon elbowを取れるようにするためには、非麻痺側の肩甲骨周囲筋の評価も必要です。肩甲帯が不安定であればそもそもon elbowの安定性を保てないので、非麻痺側肩甲帯のスタビリティを高める訓練も必要になるかもしれません。
アプローチの提案としては
・非麻痺側の側臥位姿勢の状態で麻痺側の前方リーチ訓練(例えば前方にセラバンドボール
を置き、その上に上側の麻痺側上肢を乗せて、非麻痺側で支持しながら麻痺側上肢を動か
すす・・など)
・端坐位(あるいは長坐位)の姿勢から非麻痺側へのon hand、on elbowへの反復練習。
・非麻痺側のon hand、on elbow状態から麻痺側のリーチ誘導 など
色々と考えられるかと思いますが、実現したい動作に繋がる練習が望ましいと思います。
起き上がり動作はADL動作の中でも獲得が難しいと言われています。
起き上がり動作とADLの相関性に関する研究などもたくさんありますが、起き上がりの早さや自立度などを指標にしているのが多いです。
つまり、バイオメカニクス的に寝返り⇒側臥位⇒起き上がりという理想形を経由して質の高い起き上がりを実践した方がADLに繋がるという研究はなかなかありません。(自分の知る限り)。
だからといって、自立できれば良いのかということでもなく、臨床的には非麻痺側でしっかりとon elbowしてスムーズな起き上がりが出来ると、その後の座位姿勢が安定するようなケースを多く経験します。
細かく見つつ、それが何に繋がるのかという部分を常に意識して介入していきたいですね。
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