今回は麻痺手の内在筋について考えてみたいと思います。
エビデンスベースドではなく、どちらかというと、臨床で感じていることをベースに書いています。
脳卒中などで片麻痺になると、手の痙縮が強まり、外在筋優位になります。
特に臨床上では、PIP関節の屈曲が強まり、母指は過剰な内転も強まることが多い印象です。
※痙縮に関しては別記事で書いていますのでこちらを見て下さい。
この様な麻痺手に対しては、アプローチに難渋するわけですが、”内在筋をいかに働かせるか”というのは一つのテーマだと以前から思っていました。
臨床的にも、内在筋が働くようになってくると、外在筋が抑制される場面をよく経験します。
ここで、手の筋について整理しておきましょう
●手の外在筋
深指屈筋、浅指屈筋,総指伸筋,示指伸筋、小指伸筋、長母指伸筋、長母指外転筋
●手の内在筋
虫様筋,掌・背側骨間筋,母指球筋,小指球筋
ざっくりですが、この様に分けられます。
そして、運動麻痺が生じると、以下の様な要因で手はインバランスが生じると考えられます。
・痙縮の神経機構問題として、屈曲優位になり、手の外在筋筋緊張は亢進する
・外在筋は2関節筋なので、物理的に短縮が生じやすく、二次的な筋粘弾性低下などが生じ
屈曲の過剰さを助長させている
・手の内在筋は錐体路症状として、純粋に運動機能が低下し低緊張となっている
・手の不使用により、内在筋は廃用を生じ、より抑制されてしまう
これらを踏まえると、麻痺手の戦略として、内在筋の活性化をしていきたいところですよね。内在筋を活性化させるにはどうすればよいか考えたときに、臨床的には虫様筋が重要だという印象を持っています。
虫様筋は、起始が深指屈筋腱で停止が総指伸筋腱膜という骨に起始停止を持たない面白い筋なんですよね。
なので、虫様筋の影響はダイレクトに外在筋に影響を与えることが予想されます。
また、虫様筋は筋紡錘の数も豊富だと言われており、感覚器としての働きも高いことが示唆されています。
そう考えると、虫様筋を使うような刺激、いわゆるMP関節をしっかりと屈曲した状態でのグラスプ動作などを通して物品の感覚入力などを行う事で、アクティブタッチにも繋がり、運動機能に影響を与えうることが仮説として立てられるかと思っています。
実際、臨床でもボールなど球状の物品を患者さんに対して、IP関節が過剰に屈曲しないようMP屈曲させてしっかりと握ってもらうようにすると、その後IP関節の過剰な屈曲が抑制される場面が見られます。
麻痺手に介入している人は、ぜひ一度虫様筋に少し意識を向けてみて下さい!
では!
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