おそらく、ほとんどの場合患者さんにはポジティブなフィードバックを意識していると思います。
ではポジティブなフィードバックは患者さんにどのような影響を与えるのか。
Dobkin(2010)らは、入院中の脳卒中患者に対して1日1回10m歩行の直後に歩行速度に関するフィードバックを行う事で、歩行速度が向上する事を報告しています。
この時のフィードバックの内容としては、
10m歩行後
⇩
「とてもいいですね。○○秒で歩きましたね。」
⇩
(a)「●●秒も昨日より良くなっています」
(b)「訓練の成果を発揮していることを示しています」
(c)「もう少し速く歩けるようになると思いますよ」
論文内の表現をかみ砕くと、このような声掛けを行ったようです。
つまり、褒めたり前向きなフィードバックを行ったことで、歩行速度の向上に繋がったということになります。
この結果は、興味深いですよね。
当たり前のようにも感じますが、適切な声かけを行う事で歩行に良い影響を与えられるわけです。
フィードバックを考えるとき、KRとKPという概念があります。
KR(knowledge of results:結果の知識)
KP(knowledge of performance:パフォーマンスの知識)
KRとは、ある動作をした時の結果に対する情報のことです。
簡単に言うと、「10m歩行を○○秒で歩いた」「肩の屈曲角度が100度」こういったことになります。
なので、KRのフィードバックというのは、10m歩行歩いた後、「○○秒でしたね」と声をかけることになります。
Dobkinらの研究での声掛けはこれに当てはまるかと思います。
一方、KPとは、動作遂行中の情報のことです。
「10m歩行中、股関節が曲がっている(屈曲していた)」「肩を挙上する際、脇が空いてしまっている(内旋パターンを取っている)」などです。
臨床上、患者さんに気づきを与えるため、KPのフィードバックもよく行うのではないでしょうか。
これら、KRとKPのフィードバックは重要である一方、過剰になるとに依存を生み運動学習を妨げる可能性があると言われています(※健常人やスポーツ選手に対する報告です。)
そのため、段階的にKRやKPのフィードバックを減らしていき、内的なフィードバック、いわゆる固有感覚や視覚などを使い、自身で毎回の動作の誤差を認識しながら学習を進めていくことが望ましいと考えられています。
脳卒中の方に対しても、あてはまるのかは定かではないですが、単に「褒めれば良い」という意識ではなく、声掛けの内容やタイミング、段階付けなどを意識する必要があるかもしれません。
普段何気な行っている事だからこそ、改めて振り返ってみるとよいかもしれません。
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