半側空間無視について、質問がいくつかありましたので、改めて基礎的な部分について整理していきたいと思います。
今回は、空間における分類の理解と、半側空間無視の空間参照枠における分類についての話になります。
【空間の分類】
身体を中心として空間を捉える際、身体そのものにより規定される個人内空間は『Personal space』と呼ばれます。
そして、身体表面から数cmから数十cmの範囲で身体を直接取り巻く身体近傍空間を『Peripersonal space』、さらに離れた身体外空間を『Extrapersonal space』と呼びます。
空間はまずこの三つに大別されますが、半側空間無視では、これら3つの空間において障害が生じます。
特に、リーチングが可能な範囲であるPeripersonal spaceは日常生活動作に影響が大きいため、重要視されており、無視症状も生じやすいと言われています。
【自己中心性無視と対象中心性無視】
もう一つ大事な概念なのが、空間参照枠についての分類です。
半側空間無視には、以下の二つの分類があります。
〇自己中心性無視(egocentric neglect)
〇対象中心性無視(allocentric neglect)
自己中心性無視とは、自分の身体を中心基準として、(左)空間および空間内の対象が無 視される状態です。
例えば、食事の際トレー内の左側にある食器自体を見落としてしまうなどの場合、自己中心性無視が疑われます。
一方、対象中心性無視というのは、対象そのものにおいて正中が規定され、その対象の左部分に無視が生じることです。
例えば、食器内の左側にあるご飯だけを残してしまう、『12』という数字を『2』と呼んでしまう(左側にある1を見落とす)などの場面が観察されると対象中心性無視が疑われます。
これらは、併発することもあり、単独で生じることもありますが、まずは対象者の日常動作の観察場面や評価結果から推察することが求められます。
【評価方法】
自己中心性無視と対象中心性無視の評価法の1つにOta testと呼ばれる評価法があります。
完全な〇には丸印を、欠けた円にはバツ印をつけるよう指示をします。
上記写真の左側は左全体を無視しているため、自己中心性無視を表しています。
右側は、円の左が欠けているものに丸をしているので(指示としてはバツ印をつける)、対象中心性無視を表していることがわかります。
臨床場面では、複数の検査から、病態を把握していくことが重要となります。
まずは、どの空間レベルにおける無視症状が出ているのか、自己中心性なのか対象中心性なのか、併発しているのか、検査上の所見が生活場面でも問題になっているのか。。
などを考えていきましょう!
【参考文献】
・榎本玲子,山上精次:空間認知の身体化過程 とその機序をめぐって.専修人間科学論集, 心理学篇.1: 61-69,2011.
・Ota, Hisaaki, et al. "Dissociation of body-centered and stimulus-centered representations in unilateral neglect." Neurology 57.11 (2001): 2064-2069.
・Hillis, Argye E., et al. "Anatomy of spatial attention: insights from perfusion imaging and hemispatial neglect in acute stroke." Journal of Neuroscience 25.12 (2005): 3161-3167.
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